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2017/01/30

#96. アダム・ガリンスキー: はっきり主張できるようになるには




翻訳ウラ話


私はコーチで研究者で学生でもあるので、日々、交渉や提案や相談をしたり、されたりすることが多いです。状況や相手によって自分の発言の自由度が変化することや、そこに力関係が働いていることを感じていたので、この講演を最初に聞いたときには内容がすんなり理解できたように思いました。ところが、翻訳作業に入り一言一句を細かく見ていくと、すっきりしない箇所がちらほら出てきました。感覚的な言葉遣いは魅力的なのですが、残念ながら翻訳する場合、よくわからないまま聞き流すわけにはいきません。その意味では、訳すという行為は無粋なものですね。担当者間で解釈をすり合わせたり、講演者本人に確認をとったりしました。



英語学習のヒント


上述のとおり、この講演者の英語はサラッと聞いたときと、細部までじっくり読み込んだときとで印象が変わります。違いが感じられるかどうか試してみてください。まずは字幕オフで視聴し、その後英語トランスクリプトを読みます。わかったようなわからないような箇所があったら、すぐに訳を見るのではなく、トランスクリプトの該当箇所をクリックして音声を聞いてみてください。「読んでもわからなかったけど、聞いたらなんとなくわかった」という意外な体験ができるかもしれませんよ。自分なりの解釈が合っていたかどうか、最後に日本語訳で確かめることをお忘れなく。

語彙は比較的平易で、構文も全体的にシンプルです。知らない語があったらきちんと辞書で調べ、使えるようにしておいてください。イディオム"step on someone's toes"や、"speak up (for oneself)"、"advocate for"、"put up"、"turn out"、"lean in"などの句動詞の意味と使われ方をしっかり押さえておきましょう。また、"they grant me..."、"it allows us..."のような表現は、多くの学習者にとって、知っていてもなかなか咄嗟には使えないものです。この機会に使い方を盗んでおきましょう。


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アダム・ガリンスキー: はっきり主張できるようになるには

Japanese translation by Reiko Bovee, reviewed by Emi Kamiya

はっきり考えを述べることは、そうすべき時でも難しいものです。社会心理学者アダム・ガリンスキーの賢明な助言から、意見をはっきりと述べ、難しい状況もくぐり抜け、自分自身の力を強化する方法を学びましょう。

(2017/1/29 字幕公開)

2016/11/10

#38. カルマパ猊下: 心のテクノロジー



翻訳ウラ話


こちらも様々な事情から長い間字幕が未完成になっていたものでした。チベット語を英語に通訳したものに日本語字幕をつけるという珍しい体験ができました。



英語学習のヒント


英語の部分は通訳者が一語一語を訳しながら発しているものですので、速度はゆっくりで間もたっぷり、文としても複雑ではありません。宗教家の言葉ということもあり、語や文の構成もシンプルでわかりやすいでしょう。とはいえ、あくまでも内容を伝えるための英語ですので、あえてこれを英語学習に使うことはないでしょう。通訳の言葉は話し言葉とも書き言葉とも違う特殊なものですが、ひょっとしたら日本の教科書に出てくるような“英語”にはこれと近いところがあるかもしれませんね。

講演者には「His Holiness」という敬称が付いており、「猊下」と訳しています。このような敬称の中で日本人にとって身近なのは「His/Her Majesty」でしょうか。その他にも英語の敬称はいろいろありますので、興味がある人はこちらなどで確認してください。


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カルマパ猊下: 心のテクノロジー

Japanese translation by Mariko Imada, reviewed by Emi Kamiya

カルマパ猊下がどのようにして見出され、チベット仏教で尊敬される人物になったかを話します。猊下はテクノロジーとデザインだけではなく、私たちの心のテクノロジーとデザインにも取り組むよう求めています。通訳はタイラー・デュワーです。

(2014/8/12 字幕公開)

2016/11/06

#36. ナオミ・オレスケス: 科学者を信頼すべき理由



翻訳ウラ話


本来は科学の外にいる人向けに、科学が行っていることを解説する目的のレクチャーなのですが、立場上、いつの間にか「なぜ科学をやるのか」という聞き方をしていることに気づきました。研究者はときに自分がやっていることが何の役に立つのか、見失うものです。つい、PhD学生の間でよく知られるこちらの図解を思い出してしまいました。

訳については判断に迷うような部分はありませんでしたが、固有名詞や訳語、定訳の確認に手間がかかりました。これに限らず、分野を越えていつも思うことですが、同じモノや現象を指す用語でも、英語では一般的な語の組み合わせなどで比較的素人の想像が届きやすいのに対し、日本語では日常語と明確に隔てられていて、孤高で有標、使われ方が限定的ですね。たとえば「inductive/deductive」にしても、「帰納/演繹」よりずっと身近です。「専門用語然」としているところに、日本語の専門用語のありがたみがあるんでしょうか。



英語学習のヒント


英語そのものは複雑ではなく、口調など音声的にも学習に向かないわけではありませんが、とにかく専門用語や固有名詞が多い中で話題が次々に移っていくので、英語学習という面ではなにもこれを使わなくてもいいかな、というところです。日本語字幕をオンにして、全体の意味をつかんだうえで、気になる箇所があればそこに戻って、英語字幕やトランスクリプトでチェックする程度に留めておきましょう。スピーチのスタイルとしては、話の展開や例の出し方が上手いので、たとえばガイドや広報のように、なんらかの事柄について広く浅く説明する予定がある人にとっては参考になるかもしれません。


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ナオミ・オレスケス: 科学者を信頼すべき理由

Japanese translation by Emi Kamiya, reviewed by Misaki Sato

世界の重大な問題の多くは科学者の見解を必要としますが、なぜ私たちは科学者の言うことを信じるべきなのでしょうか。科学史の研究者であるナオミ・オレスケスは、私たちと信じることとの関係を深く考察し、科学研究に対する姿勢にまつわる3つの問題点を導き出します。さらに、私たちが科学を信頼すべき理由として、独自の根拠を示してくれます。

(2014/8/11 字幕公開)

2016/11/05

#93. アビゲイル・マーシュ: 人が利他的になる理由



翻訳ウラ話


個人的に日頃から読んだり話したりしている話題と重なるところが多く、点と点がつながるような感覚があったので翻訳に着手しました。今回は“ご本人吹き替え現象”は起きませんでしたが、内容がすとんと理解でき、外部資料を探す必要もなかったため、短時間であっという間に訳し終えました。



英語学習のヒント


確認したわけではありませんが、講演者は周りに非ネイティブが少ない環境にいるネイティブスピーカーだろうな、という印象を受けました。その意味では、日本であまり出会わないタイプの英語で、聞き慣れないために聞き取りにくいと感じる学習者もいるかもしれません。自分のリスニング力を責める必要はありませんよ。また、句や節が挿入された長めの文が多く、学習段階によってはかえって混乱することになりかねませんので、文法的な分析や読み込みはお勧めしません。一方、余裕のある学習者はそれを逆手にとって、英語トランスクリプトを使うなどして、「ネイティブらしさ」がどこにあるのか考えながら音声と文字情報を追ってみてください。

TED.comのページには視聴者からたくさんのコメントが寄せられており、この講演が多くの人にさまざまなことを考えさせるきっかけになっていることがわかります。ページの下の方までスクロールし、「Discuss」の中から特に返信が付いて議論になっているものを選び、それぞれの投稿者の立場や考え方の違いを読み取ってみましょう。賛成・反対を示す際の切り出し方をバリエーション豊かに知っておくと、実際に議論する場合に便利ですから、こうしたところから盗んでストックしておくといいですよ。また、議論に参加したつもりで自分の意見を書き、英語がわかる人にチェックしてもらうのも良い練習になります。


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アビゲイル・マーシュ: 人が利他的になる理由

Japanese translation by Emi Kamiya, reviewed by nobuyuki umeji

自らの身を削ってでも他人を助けようとするなど、無私の行動をとれる人がいるのはなぜでしょう。心理学を研究するアビゲイル・マーシュは、赤の他人に腎臓を提供するドナーなど、極めて利他的な行為をする人々の動機を探っています。彼らは脳が違うんでしょうか?

(2016/11/4 字幕公開)

2016/11/02

#34. アンドリュー・ソロモン: 揺るぎなき愛



翻訳ウラ話


いろんな事情が重なって、長いあいだ日本語字幕が完成しないままになっていた作品です。“平均”より時間的に長めで難度も高く、確かに翻訳しやすいタイプのものではありませんが、一方で、訳がなければ日本の視聴者には伝わりにくい講演でもあるので、重い腰を上げてタスクを引き受けることにしました。翻訳が終わり字幕が公開されたときには「やっとお届けできる」とホッとしました。



英語学習のヒント


学習用として考えるなら、たとえば句動詞を拾って、意味と使われ方を確認してみてはどうでしょうか。句動詞とは、動詞と副詞や前置詞がセットになった慣用的な表現です。この講演の中では"come out"、"take aback"、"pass down"など、たくさん使われています。

でも実は、この講演を「英語の学習」に使うのは無粋というか、もったいないような気がします。上級者でないと実行しにくいですが、作家である講演者が紡ぎ出す、豊かで繊細な言葉の芸術をじっくり鑑賞する、というのがふさわしいと思います。日本語字幕をオンにして内容をつかんでから、英語のインタラクティブ・トランスクリプトを使い、少しずつ区切って音声を聞きながら、ゆっくり読み進めるようにしてください。知らない語は辞書を引いたり、トランスクリプトを日本語に切り替えたりして確認しましょう。「さすが」と思える表現がきっと見つかるはずです。


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アンドリュー・ソロモン: 揺るぎなき愛

Japanese translation by Seiryu Matsuura, reviewed by Emi Kamiya

自分と根本的に異質な子供(例えば天才児、あるいは特異な才能を持った子供や犯罪に手を染めた子供など)を育てるというのは、どのようなことなのでしょうか?この静かに進行するトークの中で、作家のアンドリュー・ソロモンは何十組もの親たちとの対話を通して学んだことを語ります。無条件の愛と無条件の受容とは何が異なるのでしょうか?

(2014/8/11 字幕公開)

2016/10/14

#33. ビル・ゲイツとメリンダ・ゲイツ: 富を贈ることが最高の喜び



翻訳ウラ話


あまり積極的に手を出すタイプの作品ではありませんが、某テレビ番組のために急いで字幕を公開する必要があるとのことでお手伝いしました。自分の興味や好みで作品を選んでいるとどうしても食わず嫌いになってしまいがちですが、翻訳チームの一員として貢献するという視点があると、個人的な理由では出会うことのないTalkと関わりを持つことができます。訳にあたり関連記事やゲイツ夫妻の他の講演を聞く機会も得られ、良い勉強になりました。



英語学習のヒント


TEDの中にたまにあるインタビュー形式です。講演と話し方が異なるのは当然ですが、オーディエンスを意識したやりとりという意味で普通の会話とも違います。どこがどのように違うか考えながら聞いてみましょう。また、3人の話し方の違いにも注目してみましょう。

台本のない会話なので、文が途切れたり、言い直したりしているところがありますし、内容も少しわかりにくい部分がありますので、英語の学習には向かないだろうと思います。語彙は専門用語を含め、ところどころに聞き慣れない語が見つかるでしょう。普段触れている英語によっては「普通の会話にしては堅苦しい」と感じる学習者もいるかもしれません。確かに公の場でのインタビューなのでヨソイキなところがまったくないとは言えませんが、知的レベルの高い大人同士の日常会話としては決して特別なタイプのものではありません。会食やパーティーなど、ざっくばらんな雰囲気の中でも洗練された英語を使う必要のある学習者にはとっては、参考になるところがあるでしょう。

11:45あたりから、自然な会話らしいおもしろさが生じています。字幕では字数制限の都合もあり、残念ながら補足ができていませんので、それを逆手に取って、行間を読む練習問題にしてしまいましょう。ビルが何を言っているのか、メリンダがそれをどう解釈し、どういう食い違いが起きているか、考えてみてください。こういうアクシデントから話者の人物像が見えてくるようになると、言語学習はグッとリアルで深みのあるものになってきます。


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ビル・ゲイツとメリンダ・ゲイツ: 富を贈ることが最高の喜び

Japanese translation by Mari Arimitsu, reviewed by Emi Kamiya

1993年、婚約中のビルとメリンダ・ゲイツはザンジバルの海岸を歩きながら、マイクロソフト社から得た富を社会に確実に還元する方法について大胆な決断をしました。クリス・アンダーソンを交えたトークで、ゲイツ夫妻が自身のビル&メリンダ・ゲイツ財団にまつわる活動、結婚生活、子供たち、失敗について、そして富のほとんどを贈ることにどれほど満足しているかを語ります。

(2014/8/2 字幕公開)

2016/10/10

#92. ジュリー・リスコット=ヘイムス: 我が子を成功させる、やりすぎない子育て



翻訳ウラ話


聴衆の心をわしづかみにするパワフルな講演です。翻訳が終わった後で、講演者には弁護士の経験と詩の心得があることを知り(参照)、大いに納得しました。歯切れの良さ、テンポの良さ、喩えのわかりやすさ、言葉選びのセンス、盛り上げ方は見事ですね。

子育てや大学受験など、話題に馴染みがあるせいか、私の耳には、講演者の声や口調で日本語が聞こえてくるという“ご本人吹き替え現象”が起きていました。というわけで、訳すというより、聞こえるままに書き取るという感覚で、あっという間に字幕が出来上がりました。



英語学習のヒント


発音が明瞭で、話題も身近なものなので、学習に使いやすいと思います。音声面では、韻を踏んでいる部分など、英語のリズムや美しさを味わってください。口調やスピーチのスタイルという面では、学習者が真似するにはハードルが高いのと、重ね塗りするような技は言い回しとしてくどくなってしまう恐れがあるので注意してください。

語彙はところどころに見慣れない語やイディオムがあるのではないでしょうか。前後に似たような表現があるのでそれに助けられ、だいたいわかる場合が多いかもしれませんが、英語学習を目的とする人は、そういう語ほどあえてきちんと辞書を引いて意味を確かめるようにしましょう。2:22あたりで出てくる「コンシェルジュ」などの語は、日本語で通用しているぶん、かえって英語の発音が定着しにくいかもしれません。咄嗟に言われたり、言ったりする場面で対応できるよう、講演者のあとについて発音するなどして練習しておくといいですよ。

ま、"concierge"はアメリカ人にとっても外来語なので難しいんですけどね(参照)。


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ジュリー・リスコット=ヘイムス: 我が子を成功させる、やりすぎない子育て

Japanese translation by Emi Kamiya, reviewed by Saeko Hashimoto

過度な期待をかけまくり、子どものやることなすことを細かく管理する親は、子どもの助けになっていません。少なくともジュリー・リスコット=ヘイムスにはそう見えています。かつてスタンフォード大学で新入生担当学生部長を務めた彼女が、情熱とひねりの利いたユーモアをこめて主張します。親は子どもの成功を成績やテストの点数で決めるのをやめ、昔ながらの考えに立ち返って「無償の愛」を与えることに集中すべきなのです。

(2016/10/9 字幕公開)

2016/10/08

#32. ルース・チャン: 難しい選択の仕方



翻訳ウラ話


英語学習の方法を中心に、日々さまざまなご相談を受ける中で、「選択する」ということを避ける動きをよく見かけます。変わりたいけれど変われない、何か思いついても最初の一歩が踏み出せない人には、自分で選択をする代わりに、お金がない、時間がない…などの外的な理由を並べて、「だからできない」という結論で落ち着こうとする傾向があります。でも実は「選択しない」というのも選択のうちなんですよね。コーチの仕事は、選択の難しさや選択する辛さに共感しながら、「難しくて辛いけど、逃げないで選択しよう」という気持ちになれるよう、後押しすることなのかもしれません。日本語字幕によってより多くの人にこの講演を見ていただけるといいなと思って訳しました。



英語学習のヒント


発音は明瞭、スピードはゆっくり、文は短くてシンプルなので、学習用としていろいろな使い道があると思います。語彙もやさしく、絵やジェスチャーの助けもあるので、字幕オフで、メモを取りながら視聴してみてください。メモは英語でも日本語でも、記号や図でも構いません。仮説を立てては論破する、というのが繰り返されていますので、その1つ1つについて、「仮説」と「ダメな理由」をなるべく詳しく書き取ります。追いつけなくなったら多少戻したり止めたりしても良いですが、できるだけ止めずに進みましょう。見終わったらメモをもとに講演内容を再構築し、英語で書き出します。書き終わったらトランスクリプトと見比べて、文法や表現を含めて自分で添削してみましょう。


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ルース・チャン: 難しい選択の仕方

Japanese translation by Emi Kamiya, reviewed by Tadashi Koyama

このトークであなたの人生は本当に変わるかもしれません。どちらの職業を選ぼうか?別れるべきか、結婚するべきか?どこに住もう?こうした重要な決断は難しく、なかなか決められないものです。しかしそれは考え方が間違っているからなのだと、哲学者のルース・チャンは言います。彼女が提案するのは、本当の自分を確立するための、説得力のある新たな枠組みです。

(2014/7/30 字幕公開)

2016/10/04

#90. ナディア・ロペス: 学校を開く理由、それは刑務所を閉鎖するため



翻訳ウラ話


都市部の教育問題について、私自身は直接携わってはいませんが、ニューヨークで教育に関わっていれば自然に見聞きする機会があるものです。また、周りに『Humans of New York』を読んでいる人もたくさんいます。というわけでこの話題には馴染みがありました。講演の中で紹介されている少年の記事はこちらです。

ひとくちに教育といっても、このタイプの公教育と、日本人向けの英語教育のような教育にはさまざまな違いがあります。私は大学院で言語学系ではなく教育を学ぶ道に進んだので、国・地域・個人などの規模、公的・民間の別、政策・開発・管理・教職などの立場、幼児教育から高等教育、生涯教育といった場面、科学・人文・芸術などの教科、マイノリティなど社会的側面、オンライン・オフライン・ハイブリッドなどといった、それぞれに異なる視点から教育を推進しようとする仲間たちと出会うことができました。この講演を聞きながら、何人かの顔が思い浮かびました。



英語学習のヒント


講演は約7分と短く、ゆっくり丁寧な話し方で、語彙も易しいので、字幕なしで内容を理解できるか試すのに良いのではないでしょうか。ところどころにAAVE(黒人英語)の特徴的な発音が見受けられるので、慣れていないと聞き取りにくいと感じるかもしれません。その部分は英語字幕やインタラクティブ・トランスクリプトを使って確認してみてください。

やや曖昧なところや、背景を知らないと理解しにくい部分があるので、詳しく読み込むなど分析的な作業には向かないでしょう。学習としては、気になった語を辞書で確認し、「聞いてわかる」というところまでに留めておく程度で良いと思います。


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ナディア・ロペス: 学校を開く理由、それは刑務所を閉鎖するため

Japanese translation by Kazunori Akashi, reviewed by Emi Kamiya

私たちにとって子供たちは未来であり、子供自身がそれを信じることはとても重要です。ナディア・ロペスがニューヨーク市で最も行政サービスが行き届かず、暴力がはびこるブルックリンのブラウンズビル地区に学問のオアシスを開いた理由はそこにあります。彼女は子供たち全員の素晴らしい才能と能力を信じているのです。モット・ホール・ブリッジズ・アカデミー初代校長の(そしてブログ『Humans of New York』で有名になった)彼女は、私たちに元気を与えてくれる短い話を通して、「学徒たち」が自分と家族の明るい未来を描くために、どのように手を差し伸べているかを語ります。

(2016/10/4 字幕公開)

2016/09/29

#89. サルマン・カーン: 点数ではなく身に付けることを目指す教育



翻訳ウラ話


教育関係者なら誰もが知る、カーン・アカデミーのサルマン・カーンの講演です。内容はこれまでにも繰り返し主張されてきたとおりですが、今回は新たな喩えを使ってより伝わりやすく説明しています。

Flipped Classroom(反転授業)が広がりつつあるアメリカに比べ、日本では展開が遅いような印象があります。さまざまな思惑や物理的、感情的な事情はあるのでしょうけれど、そうこうしているうちに、学習者の時間がどんどん過ぎていってしまうのは惜しいような気がします。こうした講演の字幕や翻訳が、個別の習得型学習についての理念を正しく伝え、建設的な議論を起こすための一助になればいいなと思います。



英語学習のヒント


講演の内容は学習者や教育者にとって大いに有益ですが、この講演そのものを英語学習に使うとなると、なにもこれを選ばなくてもいいかなという感じです。発音、語彙、文法の面で、全体的にゆるいところがあるので、英語学習向きではありません。パブリック・スピーキングの面では、喩えのうまさ、聴衆を惹きつける魅力という点で学ぶところがあるかもしれません。

カーン・アカデミーには日本語版もあります(参照)。日本語・英語版ともに数学のビデオが圧倒的多数ですが、英語版には英文法のビデオもあります(参照)。学習者の中で、文法が得意で、基礎がきちんと固まっている人は、こうしたビデオを使うと自分の知識がすっきり整頓されていく感覚を楽しめると思います。一方、文法が苦手な学習者はかえって混乱することになりかねませんので、まずは日本語で書かれた良質な文法書を使って、シンプルな文、基本的な項目からきちんと抑えるようにしてください。基礎から丁寧に、じっくり、しっかりと固めましょう。「穴」があいたまま次の項目を積み上げてはダメですよ。


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サルマン・カーン: 点数ではなく身に付けることを目指す教育

Japanese translation by Yasushi Aoki, reviewed by Emi Kamiya

未完成の土台の上に家を建てようと思いますか? もちろんそんなことはしないでしょう。それならどうして教育においては、まだ基礎が出来ていないうちに先へと進めてしまうのでしょう? 難しい問題ですが、教育者のサルマン・カーンが、自分のペースで習得していくのを助けることで落ちこぼれつつある生徒を好学の士へと変えられるプランを話してくれます。

(2016/9/29 字幕公開)

2016/09/25

#31. サラ・ルイス: 「あと一歩」を大事にしよう



翻訳ウラ話


人名がたくさん出てくるので、1つ1つのカタカナ表記を調べ、複数の例がある場合にはどちらが良いか選ぶのに手間がかかりました。また、アーチェリーのルールや用語に馴染みがなかったのでネット上に出ている情報を頼りに「行射」などの用語を確認しました。TED翻訳では通常ヤード・ポンドをメートルに換算していますが、スポーツによっては日本でもヤード・ポンドを採用している場合があるので、この作品内では「ヤード(m)」「ポンド(kg)」のように併記しています。講演内容そのものは理解しやすく、短時間で訳し終えました。



英語学習のヒント


発音の明瞭さは標準的で、比較的ゆっくり話しているので聞き取りやすいのではないでしょうか。文が短く、エピソードごとの区切りがはっきりしているので、内容理解の面でも扱いやすいでしょう。

字幕オフで「だいたいわかった」→日本語字幕オンで「わかった」まで進んだら、トランスクリプトまたは英語字幕を使って、知らない単語を拾ってみましょう。「わかっているつもりだったのに、改めて見てみると意外と知らない語が多いな」と思われるのではないでしょうか。辞書を引いて意味を確認してください。芸術関係者らしく、叙情的で豊かな表現がふんだんに使われています。


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サラ・ルイス: 「あと一歩」を大事にしよう

Japanese translation by Emi Kamiya, reviewed by Yumi Wagatsuma

美術史家のサラ・ルイスは、最初に就いた美術館での仕事中、ある芸術家の研究から重要なことに気づきました。それは、「すべての作品が完全な傑作というわけではない」ということです。彼女が私たちに問いかけるのは、私たちの人生における「ほぼ失敗」や「あと一歩」の役割です。成功や熟達の追求において私たちを突き動かしているのは、実はこの「あと一歩」なのでしょうか。

(2014/7/23 字幕公開)

2016/09/24

#30. ダン・ギルバート: 未来の自分に対する心理



翻訳ウラ話


有名なTED Speakerの1人であるダン・ギルバートの講演です。予備知識なくたまたま見たのですが、話がうまく、内容がおもしろいので引き込まれてしまいました。翻訳に着手した後で、彼の他のTEDやTEDxでの講演を聞きましたが(参照)、焼き直しやバージョン違いなどのように内容が重なることが一切なく、各講演がくっきり独立しているなと感じました。講演者の引き出しが多いのはもちろんですが、講演者自身が自分のパフォーマンスの鮮度を大切にしている表れかなと思います。



英語学習のヒント


発音は明瞭で、語彙は難しくありませんが、英語学習には使いにくいかなと思います。途中から畳みかけるように早口になるので、聴衆としてはワクワクしますが、学習者としては聞き取るのが大変で、ついていくのが厳しいと感じるのではないでしょうか。また、句や節が頻繁に挿入されているので、文の構成が入り組んで一文が長くなりがちです。トランスクリプトで確認すると、カンマでつながった文が多いのがわかるでしょうか。内容理解の面でも、気をつけていないと、何がどこにつながっているか、どれが本筋でどれが枝葉か見失いやすいです。

まずは無理せず、日本語字幕を見てひととおり内容を理解することをお勧めします。ただ、それだけで終わりでは少しもったいないので、最後の部分だけ英語に集中してみましょう。5:52あたりからラストまで、わずか50秒足らず、トランスクリプトなら1パラグラフ分です。話す速度も普通ですし、比較的短くわかりやすい文が並んでいますので、①ディクテーション→②英語トランスクリプトで答え合わせ→③翻訳→④日本語トランスクリプトで答え合わせ、のように使ってみてください。


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ダン・ギルバート: 未来の自分に対する心理

Japanese translation by Emi Kamiya, reviewed by Yuko Yoshida

「人間というのは未完成のくせに、自分たちは完成したと勘違いしているものだ。」ダン・ギルバートが紹介するのは、彼が「歴史の終わり幻想」と呼ぶ現象についての最近の研究です。将来の自分は、ずっと今の自分のままだろうと想像してしまう現象です。(でもそうは行きません。)

(2014/7/21 字幕公開)

2016/09/22

#29. ステラ・ヤング: 私は皆さんの感動の対象ではありません、どうぞよろしく



翻訳ウラ話


パラリンピックの開催時期とも重なり、奇しくも日本では最近になって「感動ポルノ」についての議論が起きているようですね。その流れでこの講演を初めて聞いたという人もいるかもしれません。講演者は日本語字幕公開の約5ヶ月後、2014年12月に亡くなりましたが、彼女のメッセージが今日改めて注目を集めているというのは素晴らしいことだと思います。

TEDにはコメディアンが登壇することがたびたびありますが、彼らのレトリックやニュアンス、皮肉やジョーク、遊びの部分を日本語に訳すのは本当に難しいです。きちんと訳してつまらなくしてもダメだし、狙いすぎて寒いことになるのも残念です。文化の違いも大いに関係しますので、個人的には少し物足りない「8分目」ぐらいの訳だとちょうどいいのかなと思っています。



英語学習のヒント


さすが話術のプロだけあって、発音は明瞭でテンポが良く、話の運び方やメリハリの付け方が見事です。文は短く語も難しくありませんので、まずは字幕をオフにして視聴してみてください。オーストラリア英語独特の特徴が母音などに見られますので、聞き慣れていないと戸惑いますが、頭の中でスペルを思い浮かべると解決するのではないでしょうか。解決しない箇所は英語字幕をオンにして確認してください。

3:00あたりで、英語の大文字についてチラッと触れる箇所があります。これは「"polish" と "Polish"」など(Capitonym:参照)のように辞書を引けばわかる話ではありません。感覚的なところなので、説明が難しく、ある程度英語を使い慣れないとつかみにくい部分です。「大文字と小文字で違いがあるんだな」ということを頭の片隅に置いておくと、いずれどこかで出会ったときにピンとくるでしょう。意欲のある学習者はこちらの記事などを読んでみてください。


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ステラ・ヤング: 私は皆さんの感動の対象ではありません、どうぞよろしく

Japanese translation by Mari Arimitsu, reviewed by Emi Kamiya

コメディアンでジャーナリストのステラ・ヤングは、たまたま車椅子で生活をしています。ヤングが強調したいのは、この事実だけでヤングが全人類を感化するような気高い存在になるわけではないと言うことです。この面白い講演で、ヤングは私たちの社会が障害者を「感動ポルノ」にしてしまう風潮を批判します。

(2014/7/18 字幕公開)

2016/09/20

#27. ウーリ・アロン: 真の革新的科学のために、未知の領域へ飛び込むことが不可欠な理由



翻訳ウラ話


この作品前後、私は集中的に翻訳に取り組んでいたせいか、字幕なしのビデオを初めて見たときに、日本語の吹き替えが聞こえてくるような感覚をもつようになっていました。講演者が、声や口調、タイミングはそのままに、日本語を話してくれるので、それをただ書き取るだけで翻訳ができあがるというわけです。おかげで1本の翻訳がわずか1-2日程度で完成していました。

全体としては大変わかりやすく話してくれているのですが、10:05あたりからの表現が一部わかりにくかったので、友人の生物学者に助けを求め、噛み砕いて解説してもらいました。マニアックな話を、そうとは気づかず織り込んでしまうのは、いかにも研究者です。



英語学習のヒント


講演者はイスラエルの科学者です。アクセントはありますが、ほとんど気にならないでしょう。役者の経験を持つだけあって、表情や表現が豊かで、説明が上手です。英語をひたすら勉強して、言語以外に頼らず伝えきるというのも立派ですが、彼のように科学・演劇・音楽など多彩なチャンネルを使って聴衆の心を掴み、メッセージを伝えるというのも、学習目標としてアリですよね。

この講演には気持ちを表す形容詞がたくさん使われています。英語字幕やトランスクリプトから拾ってみてください。辞書で意味を確認するだけでなく、講演の中での使われ方や描写を踏まえて具体的にイメージしたり、自分はどんなときにその感情を抱いたか思い出したりしてみましょう。そうやってイメージや気持ち、過去の体験と結びつけることで、新しい知識は脳にしっかりと記憶されるようになります。


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ウーリ・アロン: 真の革新的科学のために、未知の領域へ飛び込むことが不可欠な理由

Japanese translation by Emi Kamiya, reviewed by Makoto Ikeo

物理学を専攻し博士課程で研究していた頃、ウーリ・アロンは自分のことを失格者だと思っていました。どの研究も行き詰まっていたからです。しかし、即興劇に救われ、彼は迷いの中にも喜びがあるのだということに気づきました。研究を、疑問と答えをつなぐ直線と見るのを止め、もっとクリエイティブなものと考えるよう科学者たちに求めます。専門分野を越えて共感できるメッセージです。

(2014/7/7 字幕公開)

2016/09/19

#26. ジェニファー・シニア: 幸福は親には高すぎるハードル



翻訳ウラ話


話題に馴染みがあったせいか、短時間で一気に訳し終えてしまいました。12:53あたりで出てくる"drones"は、翻訳当時(2014年6月)アメリカではすでに一般に通用する表現となっていましたが(参照)、日本ではまだその存在は一般的でなく、「ドローン」も日本語として定着していませんでした。時間・文字数に制約のある字幕の中で「無人機」と化して子どもの動向を追う親の姿をイメージしてもらうのは難しいと判断し、その時点で少なくともネット上では一般的に使われていた「ヘリコプターペアレンツ」の一種として扱うことにしました。現在(2016年9月)は日本でも「ドローン」がよく知られていますが、だからと言って、たとえば「ドローンペアレンツ」のような訳にしていたら、ドローンを操作して子どもに何か届ける親のことかと誤解されてしまうかもしれませんね。



英語学習のヒント


台本を用意してみっちり練習してきた様子が感じられ、TEDの講演にしてはやや作り込んだ感じが気になりますが、そのぶん英語学習には使いやすいでしょう。よく練られた文章の構成はライティングやパブリック・スピーキングのお手本として参考になります。インタラクティブ・トランスクリプトを開いて、左上の小さな画面で映像を流し、音声を聞きながら文字を目でたどってみてください。トランスクリプト上で気になる部分をクリックすると映像がその部分に飛びますから、発音を確認したり、一時停止してリピートする練習に便利です。


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ジェニフェアー・シニア: 幸福は親には高すぎるハードル

Japanese translation by Emi Kamiya, reviewed by Shoko Takaki

書店の育児コーナーには圧倒されます。作家のジェニファー・シニアが言うとおり、それは「巨大でカラフルな、皆のパニックの象徴」です。親であることは何故こんなにも不安だらけなのでしょうか?その理由は、現代の中流家庭の親たちが目指す、「幸せな子どもを育てる」という目標があまりに捉えどころがないからです。この歯に衣着せぬトークでは、より私たちに寄り添った達成しやすい目標が示されます。

(2014/7/1 字幕公開)

#25. アン・カーザン: 言葉が「本物」になる条件



翻訳ウラ話


私は英語や日本語について、調べたり考えたり教えたりするのが日常ですが、私の興味は一貫して「何が正しいか」より「いま、何が使われているか」にあります。というわけでこの講演は個人的に身近に感じられ、あっという間に楽しく訳し終えました。「最近の言葉の乱れは目に余る」というのは、いつの時代にも、おそらくどの言語でも言われていることなんでしょうね。



英語学習のヒント


聞き取りやすさは標準的で文も複雑ではありませんから、いろんな学習に使えそうな講演ですが、せっかく「word」がテーマなので、単語に焦点を当ててみてはどうでしょう。実際、キーワードがわからないと話についていけず、会場の笑いにも乗り遅れてしまうので、内容理解のためにも意味を確認しておくといいですよ。普通に辞書を引いてもいいのですが、この講演で紹介されている単語をもとに自分で英英辞典を手作りすると、意味を見て暗記するのと違い、語義の英語からさらに語彙や表現が学べます。やり方は学習者のレベルに応じていろいろ考えられますが、たとえば以下のような方法があります。

①ノートを用意し、英語字幕やトランスクリプトから、「defriend」「hangry」「adorkable」のように、見出し語だけを拾って記入する。 ②講演者の説明を頭の片隅に起きながら、自分なりに考えて、意味・定義を書き入れる。 ③辞書やインターネットを使って確認し、実際の意味・定義を書き入れる。 ④見出し語を使って例文を作る。

講演の中の単語が終わったら、次にAmerican Dialect Societyのページへ行って、最近の「今年の単語」についても同じように見出し語と語義を書き出し、例文を作ってみましょう。語義の中にわからない単語があったらそれを見出し語に立てて、辞書を引いて語義を記入していきます。ポイントは見出し語よりも語義です。簡潔に説明する感覚を養いましょう。

ちなみに、2015年の「今年の単語」はこちらのTalkと関連がありますよ。


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アン・カーザン: 言葉が「本物」になる条件

Japanese translation by Emi Kamiya, reviewed by Ricky Park

「hangry」「defriend」「adorkable」 などの俗語は、たとえ辞書に載っていなくても、英語という言語の意味における重大な不足を補っていると言えます。結局のところ、どの語を辞書に収録するか決めているのは誰なのでしょう?歴史言語学者のアン・カーザンは、辞書作りの舞台裏にいる人たちに目を向け、彼らが絶えず行っている選択を魅力的に紹介してくれます。

(2014/6/29 字幕公開)

2016/09/18

#24. ポール・ピフ: お金が人を嫌なヤツにする?



翻訳ウラ話


テーマに興味があったので翻訳タスクをとりました。ちょうど自分の研究のために2人組の会話を収録したビデオをひたすら見続けていた頃だったので、この講演で紹介されている研究やビデオのサンプルがどこかでリンクしたのかもしれません。できるだけ講演者の口調に合わせ、距離感の近い雰囲気を損なわないよう、かな・カナ・漢字の表記も含めた日本語の選択に気を配りました。



英語学習のヒント


講演者は西海岸カリフォルニア州の若手プロフェッサーです。紹介されているビデオの中に出てくる被験者を含め、全体にいわゆる「くだけた」表現が含まれています。日本人学習者の中にはこのタイプの英語が話せるようになりたいと憧れる人も多いのではないでしょうか。話し言葉としてはごく自然なものですし、聞いて内容がわかることは重要ですが、同じような話し方が適切かどうかは、あなたのキャラクター、場面、話す相手によって事情が変わってきますので注意してください。

語彙はさほど難しくなく、わからない語があっても辞書を引けば解決するレベルでしょう。似たようなことを表す語を使い分けている場面がいくつもありますので、英語字幕やトランスクリプトから拾ってみましょう。それぞれの違いを確認しながら、だいたい同じ意味のグループとしてまとめて覚えるようにするといいですよ。


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ポール・ピフ: お金が人を嫌なヤツにする?

Japanese translation by Emi Kamiya, reviewed by Yuko Yoshida

勝敗の決まっているモノポリーによって驚くべきことが明らかになります。この愉快かつハッとさせるトークで社会心理学者のポール・ピフが紹介するのは、自分が裕福だと感じる人がとる(残念な)態度です。不平等の問題は複雑で困難な課題ですが、朗報もあります。(TEDxMarinにて収録)

(2014/4/8 字幕公開)

#23. デヴィッド・スタインドル=ラスト: 幸せになりたいなら 感謝しよう



翻訳ウラ話


講演者がゆっくりと話しているということは、字幕作成の観点からすると、文字数に余裕があるということです。内容も易しく繰り返しが多いので翻訳そのものは短時間のうちに終わりました。非母語話者にはよくあることですが、ところどころ表現が微妙で解釈に幅ができてしまうところがありました。担当者間で「こういうことじゃないですかねぇ」と話し合いながら、できるだけ妥当と思われる解釈を選択しました。



英語学習のヒント


母語(オーストリアドイツ語)のアクセントが感じられますが、日本人学習者には意外と聞き取りやすい英語ではないでしょうか。一語一語を大切に、噛みしめるように語りかけてこられ、また、抑揚など表現も豊かなので理解しやすいでしょう。普段、日本語字幕を使っている人も、この作品はまず字幕をオフ、次に英語字幕をオンにして視聴してみてください。字幕1コマごとに一時停止して、英語を音読してみるのも良い練習になります。講演者の英語の中には、単語の発音や熟語の使い方など、いわゆる学校英語をきちんと学んだ形跡がありますが、見つけられるでしょうか。中学校の教科書を読み返したい気持ちになるかもしれません。基本をおさえるというのは簡単なようで、実はなかなかできることではありません。


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デヴィッド・スタインドル=ラスト: 幸せになりたいなら 感謝しよう

Japanese translation by Ayako Inoue, reviewed by Emi Kamiya

「私たち全ての人間に共通することは、幸せになりたいという気持ちを持っていることだ」と、修道僧であり諸宗教の研究者であるデヴィッド・スタインドル=ラストは言います。「幸せは感謝の心から生まれる」と彼は説きます。ゆとりを持ち、自分の方向性を見極め、そして何よりも感謝の気持ちを持つことについて、彼の教えが心に響きます。

(2014/2/9 字幕公開)

2016/09/17

#22. ジェームズ・フリン: なぜ祖父母世代よりもIQが高いのか



翻訳ウラ話


「mind」という語はいつもどう訳すのが良いか迷います。IQがテーマのこの作品ではさらに「cognitive~」や「mental~」などとも関わり、「お互いに近いんだけど、同じではない」「違うんだけど、日本語では表しきれない」というところで、正解のない問いに何度も悩まされました。

私は歯ごたえのある講演ほど日本語字幕が必要とされるだろうという考えから、こういう作品を積極的に選ぶ傾向があります。字幕がなくても、あるいは翻訳しなくても伝わる作品より、少し大変でも訳し甲斐があるものの方が、字幕を届ける意味が大きいような気がするからです。自己満足でしょうね。そうそう、講演の途中で馴染みのある地名が出てきた場面では、ほっこりしました。



英語学習のヒント


「聞き取れないわけではないけど、よくわからない」という印象を持つ学習者が多いかもしれません。内容がある程度理解できていないと厳しいでしょう。無理せず、日本語字幕をオンにして、講演の主旨をつかんでください。趣味程度で英語学習をしている人は、そこまでにして、他のもっとわかりやすいビデオを楽しむのが良いと思います。一方、たとえばアメリカの大学に進学する予定がある人は、このような学者らしい話し方をする教授に出会う可能性が大いにありますから、講義を聴く予行演習のつもりで、英語・日本語とも字幕をオフにして、メモを取りながら視聴してみましょう。18分で集中力が切れてしまうようでは、講義についていけません。できれば自分の取ったメモを誰かに見せて、効果的なメモが取れているかチェックしてもらうといいですよ。

学習用教材として使いたい場合は、たとえばトランスクリプトを開いて、まずは全体を見渡してみてください。このまるで論文のような文章を、ステージ上で淀みなく話していたんだということがわかり、講演者の凄さが改めて感じられるでしょう。次に、パラグラフの一部(5文前後)をランダムに選んで、内容をなるべく変えずにより平易な語や構文で書き換えてみてください。自分の持っている語彙や文法力でどこまで表現できるか、良い力試しになります。


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ジェームズ・フリン: なぜ祖父母世代よりもIQが高いのか

Japanese translation by Shohei Tanaka , reviewed by Emi Kamiya

「フリン効果」と呼ばれるものがあります。IQテストで、どの世代も前の世代より高い数値を示すというものです。私たちは本当に賢くなっているのでしょうか?それとも単なる考え方の違いでしょうか?道徳哲学者のジェームズ・フリンは、20世紀の知に関する歴史を通じて物事がめまぐるしく展開する中、考え方の変化が驚くべき(そして良いこととは限らない)結果をもたらしたという見解を表します。

(2014/1/20 字幕公開)

2016/09/15

#21. 坂 茂: 紙で出来た避難所



翻訳ウラ話


日本人の英語を翻訳する際の“あるある”ですが、「たぶんこう言いたいんだろうけど、そこまで補ってしまっていいんだろうか」と迷うところがありました。過不足なく、できるだけオリジナルに近い内容で日本語に訳すよう心がけました。翻訳のための情報収集として、世界各地での坂さんのご活躍や実績についてたくさんの記事を読みましたが、どのプロジェクトもスジが通っていて、一貫して美しく、感動的でした。ここで紹介されている避難所は、最近でもエクアドルや熊本で被災者の救いになっています。



英語学習のヒント


日本人の講演者が、TEDxTokyoという日本でのイベントで行った講演です。日本の英語教室をはじめ、日本人同士が英語で話す場面はいまや珍しくありませんが、そこには独特のジレンマも生じますので学習環境として選択する際には注意してください。たとえば発音や語彙では、日本語を話さない人には聞こえない部分が聞こえ、英語として意味のわからないはずの部分がわかって、なんとなく通じてしまうということがあります。TEDの字幕翻訳でも、講演者の母語(この場合は日本語)を話さない人が書き起こした英語のトランスクリプトに講演者の意図する語や表現が反映されておらず、母語がわかる人がそれに気づいて修正を依頼するということがあります。これを良いと捉えるか、良くないと捉えるかはそれぞれの学習者の学習目的によります。

また、日本人は日本人の英語に非常に厳しく、減点法で評価をする傾向があります。「外国人相手に英語を話すのは構わないけど、一人でも日本人がいるとやりにくい」という学習者もいます。これは教育ではPeer pressureと呼ばれ、やはり良い面と良くない面があります。いわゆる「ネイティブ信仰」や完璧主義とも関わりがあります。

この講演では、日本語母語話者が、自分の伝えたい内容を伝えるのにじゅうぶんな英語を使って、棒読みでも丸暗記でもない自然な自分の言葉としてメッセージを発信しています。その姿からは学ぶべきところがたくさんあります。外国人にウケそうなジョークを良いタイミングで差し込むところなど、さすが国際的な場に慣れている方だなぁと感じさせます。人々が講演や講演者に対して魅力を感じるポイントは、決して英語の完璧さや流暢さではありません。


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坂 茂: 紙で出来た避難所

Japanese translation by Akinori Oyama, reviewed by Emi Kamiya

サステナビリティが盛んにささやかれるようになるずっと前から、建築家の坂 茂 は紙管や紙などの環境に優しい建材を使う実験を始めていました。彼の手による見事な建造物の多くは仮設住宅として、ハイチやルワンダ、そして日本などの被災地で全てを失った人々を救うために建てられました。しかし、こうした建造物が現地に溶け込み、当初の目的を果たした後も引き続き愛されているということがしばしば起きています。(TEDxTokyoにて収録)

(2013/11/9 字幕公開)