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2016/10/05

#91. 精神的に強くなる秘訣 | エイミー・モーリン | TEDxOcala



翻訳ウラ話


「聞いてわかる」のと「日本語に訳せる」というのは違うものだなぁと改めて感じました。たとえば2:23の"I shouldn't have to deal with it." 日本語ではなんて言うんだろうとあれこれ考えを巡らせました。何度も再生して口調を確かめ、"I shouldn't have to ~"を含む文を検索して、文脈からそこに込められた感情を読み取ろうとしたのですが、結局これだという訳には出会えませんでした。どことなく「他の人ならいい」「自分以外の人にしてくれ」というニュアンスがありそうだと判断して、担当者間で「私じゃなくてもいいはず」「どうしてこんなことが」「こんな目に遭うなんて」などの候補を出しあいました。



英語学習のヒント


"cost" "deserve" "afford" など、日本語にしにくい動詞が次々と出てきます。こういう語は、受験テクニックによくある単語帳的な暗記ではなかなか使いこなすところまで到達しません。ターゲットとなる語が使われている文をなるべくたくさん集め、背景なども含めて目を通し、感覚的にじんわり吸収していく必要があります。手順としては、まず辞書を引いて用例を上から下まで読みます。できるだけ多くの辞書を当たってください。次にこの講演の例から、「どんな心情、どんな場面で使われ、どういうことを指しているか」ということを考えます。続いて、ターゲットの語を自分の状況にあてはめて文を作ります。最後に、英語がわかる人に前後関係を含めて説明し、自分の作った文が自分の言いたいことと合っているかチェックします。「いつかこういう場面になったら使おう」と準備しておくと、意外と“その時”はすぐやってきて、英語が咄嗟に出るという体験ができますよ。

また、この講演は時間感覚の学習にも使えます。学習段階に応じていろいろな方法が考えられますが、初学者はまず「過去」を表現する方法を拾ってきちんと押さえましょう。次の段階にある学習者は、過去をベースに、いわゆる「大過去」の表現を確認してください。さらに余裕のある学習者は、「現在形」が使われている部分に注目し、その効果や奥深さを味わってみましょう。TEDxの講演にはあいにく公式のトランスクリプトがありませんが、ネット上には使えそうな資料がありますので参考にしてください。


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精神的に強くなる秘訣 | エイミー・モーリン | TEDxOcala

Japanese translation by Emi Kamiya, reviewed by Reiko Bovee

精神的に強くなる能力は誰にでもありますが、ほとんどの人はその方法を知りません。どんな状況でも、考えを正し、感情をコントロールし、生産的な行動をとる方法を身につけるための練習をするという選択は可能なのです。精神的強さの基本的な3つの要素について、臨床ソーシャルワーカーと心理療法士の資格を持つエイミー・モーリンが語ります。

(2016/10/5 字幕公開)

2016/09/19

#26. ジェニファー・シニア: 幸福は親には高すぎるハードル



翻訳ウラ話


話題に馴染みがあったせいか、短時間で一気に訳し終えてしまいました。12:53あたりで出てくる"drones"は、翻訳当時(2014年6月)アメリカではすでに一般に通用する表現となっていましたが(参照)、日本ではまだその存在は一般的でなく、「ドローン」も日本語として定着していませんでした。時間・文字数に制約のある字幕の中で「無人機」と化して子どもの動向を追う親の姿をイメージしてもらうのは難しいと判断し、その時点で少なくともネット上では一般的に使われていた「ヘリコプターペアレンツ」の一種として扱うことにしました。現在(2016年9月)は日本でも「ドローン」がよく知られていますが、だからと言って、たとえば「ドローンペアレンツ」のような訳にしていたら、ドローンを操作して子どもに何か届ける親のことかと誤解されてしまうかもしれませんね。



英語学習のヒント


台本を用意してみっちり練習してきた様子が感じられ、TEDの講演にしてはやや作り込んだ感じが気になりますが、そのぶん英語学習には使いやすいでしょう。よく練られた文章の構成はライティングやパブリック・スピーキングのお手本として参考になります。インタラクティブ・トランスクリプトを開いて、左上の小さな画面で映像を流し、音声を聞きながら文字を目でたどってみてください。トランスクリプト上で気になる部分をクリックすると映像がその部分に飛びますから、発音を確認したり、一時停止してリピートする練習に便利です。


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ジェニフェアー・シニア: 幸福は親には高すぎるハードル

Japanese translation by Emi Kamiya, reviewed by Shoko Takaki

書店の育児コーナーには圧倒されます。作家のジェニファー・シニアが言うとおり、それは「巨大でカラフルな、皆のパニックの象徴」です。親であることは何故こんなにも不安だらけなのでしょうか?その理由は、現代の中流家庭の親たちが目指す、「幸せな子どもを育てる」という目標があまりに捉えどころがないからです。この歯に衣着せぬトークでは、より私たちに寄り添った達成しやすい目標が示されます。

(2014/7/1 字幕公開)

2016/08/17

#3. ジョルジェット・ムルヘア 「孤児院の悲劇」



翻訳ウラ話


私が翻訳に取り組むかどうかを決めるポイントは、「この講演・ビデオの内容を、日本語にして伝えたいと思うかどうか」です。はじめてこの講演を見たとき、日本で保育や幼児教育に携わる友人たちから聞いていた内容と重なる部分が多かったため、「ぜひ日本の視聴者に届けたい」と強く思いました。戦争や政治不安などと無縁でも、生みの親のもとで育てられていても、子どもたちの暮らしが「憂鬱になるほどよく似ている」ということがあり得ると知るのは、とても恐ろしいことですが、目を背けるべきではない現実です。



英語学習のヒント


聞き取りやすい発音、速度、アクセントのイギリス英語なので、リスニングや後について言う練習に使えそうです。アドリブではなく、原稿を用意してきちんと話しているので、かなり書き言葉に近い文や構成になっています。Transcript(参照)を使って、読みこんだり、訳したり、文法的に分解してみたりするのも良いでしょう。また、段落ごとに要約をしたり、段落同士のつながりに着目したりすると、ライティング(文章を書くこと)やディスコース(かたまりごとに文章の展開などを考えること)の面でも役に立ちそうです。

明るく楽しく、夢や希望にあふれ、カラフルでユーモアたっぷり…というのとは違い、テーマが重く、画に変化がないので、大人気になるタイプのTalkではありません。しかし、静かな雰囲気の中に力強さがあり、深刻な問題をわかりやすく伝え、大切なことを鋭く指摘する素晴らしい講演だと思います。KECでは真面目な内容をきちんとした英語で話し、自分の言葉に責任を持ち、自分の考えをより豊かに表現できるようになりたいと望む、成熟した学習者を特に応援しています。


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ジョルジェット・ムルヘア 「孤児院の悲劇」

Japanese translation by Kazunori Akashi, reviewed by Emi Kamiya

孤児院は多大な費用がかかる上、子どもの心と体に取り返しのつかないダメージを与える可能性があります。にもかかわらず、なぜこれほど多く存在するのでしょうか?ジョルジェット・ムルヘアは孤児院での悲劇を語ることを通して、支援が必要な子どもたちを別の方法で救い、孤児院に頼ることをやめるよう強く訴えます。

(2013/2/5 字幕公開)